あしたの今日は…? (お侍 拍手お礼の五十二・続)

        〜寵猫抄より
 


小さな仔猫は探検が大好き。
ちょっぴり古めかしいお屋敷の中は、
小さな彼には格好のフィールドで。
家人の眸が離れた隙なぞに、
物入れの奥や家具の隙間、廊下の変なくぼみやなんか、
何んだろなんだろと覗いたり、
む〜〜〜んと悩んだ末にお顔を突っ込んでみたり。
あ、黒いむいむいは無視するのよ。
だって追い回したりしたらシチが大騒ぎするんだもの。
ヒョゴ兄も 気になっても無視しろってゆってたし。

 「…にゃ?」

今日は朝も早くから、
そんな探検・探査のタイミングが訪れた。
七郎次がキッチンへ立った隙、
とことこと向かったのは誰もいないリビングだ。
くああとあくびをしながら、
小さな背中を伸び伸びさせてたそのまま、
ふと頭上を見上げた久蔵。
あれれ?と、そのままの姿勢で小首を傾げてしまったのは。
籐の籠の縁からはみ出してる白いのに気がついたから。
ソファーの上だと落っこちかねない、お部屋の角では埃を吸おうと、
シュマダとシチであれこれ検討した結果、
リビングのラグの上というえらく広々したところに、
ふかふかな分厚い座布団に縁をつけた寝床を置いてもらってる久蔵で。
冬場はラビットのファーのお布団も敷いてたけれど、
さすがに今はそれだと暑くって。
何日も何日も蹴り出してたので、
やっとシチが春向きのお布団に替えてくれたばっかりで。
…って、それは今日はどうでもいいの。
何これと、筒になってるその籠を見上げ、
よいちょと掴まり、立ってみる。
中身が軽いか、ふわりと揺れたが、
そこは久蔵の方でもそろそろ慣れたもので。
凭れかからず、自分で踏ん張り、えいと立ってのお手々を伸ばす。

 「うにゅ〜〜〜。」

もちょっとなの、でも触れないの。
えいえいと片っぽだけ伸ばしてもダメダメで、
じゃあと籠に掴まってう〜んって、
う〜〜〜〜〜んって手を伸ばしたら。
ばさり、籠が倒れちゃった。

 「…久蔵?」

あやや、お廊下からシチの声がした。聞こえたのかな。
おイタしたらメでしょって、叱らりるかな?
どしよどしよと後ろ向きに下がったら、
何かを踏んじゃって、お尻からポテンとこけたの。
籠の口のところから出てきちゃってか紙の何か。
あ・そか、これが見えてたのかな。
でもこれ、昨日シチがお窓に飾ってたのにな。
お膝の上で幾つも幾つも作ってて。
それで遊んでってお手々出したら、ダメよって遠くにされちゃったの。
そんなして大事にしてたのに、もうないないしたのかな。

 「キュウゾ…あ。//////」

わあ、見つかった。
だって、ちゅめにひかかってとれないんだもの、
シチ、これ。

 「はいはい、じっとしていてね。」

そばまで来ると屈み込み、
彼にはそう見える小さな坊やの、
ふわふかな綿毛頭を懐ろへそおと抱え込むと、
お尻からひょいって、軽々抱え上げてくれて。
入れ替わるようにラグへと腰を下ろすと、
幼い坊やの薄くて小さな爪を引っ張らぬよう、
それは丁寧に七郎次が外してくれたのは、
ちり紙で作った“てるてる坊主”というお飾りだ。
小さな小さなそれを5つほど、
昨日、急いで拵えて吊るしてた彼だったのだけれども。
効き目がなかったのでと、
提げたとき同様にこっそり外していたらしく。
自分の手の中へ収まった、ちょっぴり不恰好なお人形、
ついついじっと見やってのそれから、

 「にわかな作りようだったから効かなかったのかなぁ。」

  …ってゆうか、今日は降らなかったうちなのにネ。
  なのに、勘兵衛様ってば、
  曇ってるのを観て、
  これで儂の勝ちだなんて言うんだもの、おかしいと思わない?

小さな坊やを相手に、そんな繰り言を言い出すお兄さんであり。

  そうなの、今日は朝から変なの

お外がうす曇りで時々雨あめこんこなのを観てからのずっと、
シチは、あ〜あなんて言っててね?
シチは雨あめが嫌いなのかな。
シュマダはなんか楽しそうにしてたのにな。
お髭を撫でながらとってもニコニコしててね、
『久蔵、今日はいっぱい遊んでやろうぞ』って約束してくれたのvv
シュマダはきっと雨が大好きなのねvv

 「七郎次、どこにおる?」
 「あ、はい。今行きます。////////

ぽぽうと真っ赤になったシチからは、
シュマダが好き好きってゆ 甘い匂いがふんわりしてて。
いつものことではあるけれど、
けどでも、朝からこんなに濃ゆいのがするのは珍しい。
何でだろ。ヒョゴ兄が来たら訊いてみよ。




  〜どさくさ・どっとはらい〜  09.06.24.


  *ご夫婦の賭けの顛末篇でございました。(笑)
   勘兵衛様が“自分が勝ったら”と持ち出したのは、
   きっと閨にまつわることに違いないというご意見が多数でして。
(爆笑)
   いやまあ、こちらの勘兵衛様は、
   まだお若いということになってもおりますしねぇ?
   そして、いらんことを訊かれる兵庫さんも災難ですね。
   これで向こうさんからも嫌われる島田先生だったりするのであった。
(苦笑)


めるふぉvv
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